おしぼりと水がタダなのは日本くらい

夕食はピザ屋に連れて行ってもらった。
アルトゥールのお気に入りらしい。

こじんまりとした入り口を通って店内に入り、ウエイトレスに案内された席は、テラスにあった。
日本のように紙おしぼりや、水のサービスはない。
ウクライナでは普通である。
やはり日本の接客のレベルは高いのだと感じた。
アルトゥールオススメのパイナップルのピザを注文した。
ピザが来るまで飲み物を飲んで待つ。

テラスの中には、入り口付近のテーブルでなにやら盛り上がっている中年の男女4,5人、真ん中のテーブルに中年ぐらいの男が2人、入口と反対側にあるテーブルにカップルがいた。
ウクライナに来てからやたらとカップルを見かける。

「女性は男性と思考回路が違うから、男には女性の行動がよく分からない」
アルトゥールはときどき「女性哲学」を語る。
カップルはテーブルに向かい合うように座っていて、見つめ合っていた。

中年の男2人組は英語を話していた。
旅行者かビジネスマンだろう。

ようやくピザが来た。
直径40センチはあると思った。
トマトソースの上にベーコン、パイナップル、チーズがトッピングされていた。
ドリンクを付けて値段は160フリブナ(1600円)。
日本では同じ値段で小さいサイズしか買えないのに。

1切れだけでも取り皿を覆い尽くさんばかりである。
決して皿が小さかった訳ではない。
2人で半枚ずつ食べた。
日本にいるときよりも多く食べている。
「腹が減っては」
というやつだろうか。

割り勘にしたかったが、アルトゥールがおごると引き下がらなかった。
160フリブナはウクライナの物価にすると、決して安くはなかった。
ウクライナで未だにお金を使っていない。

食事代の5〜10%ほどのチップ払うのがレストランでのマナーである。
店を出るとき、アルトゥールはフリブナ札に重しをして、テーブルに置いた。

キエフと各地を結ぶ駅

セントラル・ステーションに行った。
キエフからリヴィヴ、モスクワなどへ通じる鉄道が走っている。

非常に大きな駅で、内装も美しい。

チケット売り場には行列ができている。

プラットホームにも行ってみた。
京都銀行のCMに使えるくらい「ながーーーい」車両だった。

裏側の入口近くにあったオブジェ。


駅周辺はどこへ行っても白人ばかりで、アジア系の顔すらほとんど見つからない。
このような環境に大分慣れてきた。
鏡を見ないと自分がアジア人だということすら忘れてしまいそうである。

日本にいるときに立てた計画では2,3日キエフに滞在し、西方の都市リヴィヴに行き、南方のオデッサにも行こうと考えていた。
しかし、アルトゥールは僕の計画に賛成ではなかった。
セントラル・ステーションからリヴィヴに行けるが、10時間はかかるらしい。
チケットを予約する必要もあるという。

1人旅をしたいという気持ちもあったが、少々無謀な感が否めなかった。
ガイドブックは一切持ってないし、英語が通用するところが思ったより少なかった。
案内板は基本ウクライナ語かロシア語で書かれている。

アルトゥールにキエフの街を案内してもらい、ルーダにご飯を食べせてもらって、洗濯までしてくれている生活に、何ら不自由はなかった。

これがウクライナの出会い(恋愛)スタイル

アルトゥールはときどき咳をしている。
僕の体調も万全ではない。
昼夜の寒暖差があるこちらの気候に体が慣れていなかった。
日本の9月中旬は、秋の気配はする一方で、残暑の厳しさが残っているもの。
日本のように半そで半ズボンで寝ていたら、明け方に目覚めてしまい、手足が冷たくなっていた。
その日から鼻水、くしゃみが止まらない。

背の高い樹がいくつも立っていて、直射日光を遮っている。
広々とした公園を散歩したり、ベンチに座って自然を眺めるのは心地いい。
日本のように湿度が高くないため、木陰に入ると急に暑さが和らぐ。
木々の隙間から吹き込んで来る風が肌に当たり、適度な涼しさと緑に囲まれ癒される。

遠く離れたベンチにカップルが座っていた。
人目を気にせずにいちゃつくので、すぐにわかる。
平日の夕方にも関わらず、多くのカップルを見かけた。
日本のように公の場で自粛する感じが全くない。
メトロの中やエスカレーター上でキスをしていても、お構いなしである。

ウクライナはカップルが多いという話をしていたら、アルトゥールに、人と目を合わせることができるか聞かれた。
日本で相手の目を長く見ることはないと思う。
目上の人を凝視することは失礼だと思われることさえある。

ウクライナではアイコンタクトは失礼にはならないし、すれ違う女の子を見つめて向こうがスマイルを返したら、自分に気があるサインなのだそうだ。
僕はそんなに単純に考えて大丈夫なのかと思った。
日本だと本音と建て前があるので、愛想笑いに過ぎないこともある
彼曰く、ウクライナ人は感情表現がストレートなのでスマイルは「好意」と考えていいのだそうだ。
歩いているときに自分にスマイルを向ける子を見つけたら、飲みに誘うこともできるそうだ。
ごくまれに女の子から話しかけてくるケースもあるらしい。

メトロから降り、人ごみを抜けてエスカレーターを上っているとき、アルトゥールに「君を見てスマイルをしていた子がいた」と真顔で言われた。
全く気付かなかった。
ウクライナの女性はウクライナの男性が好きなのだが、アフリカ系やアジア系を好む子もまれにいるのだという。
今度からすれ違う人の顔を見ようと思った。

ウクライナの国民性

アルトゥールはようやくおじいさんと話し終わったり、公園から出発する。
歩いているときに、ウクライナの国民性について話してくれた。

ウクライナ人はウクライナ人同士だけでなく、外国人に対しても親切な国民らしい。
それはウクライナが過去にポーランドやロシアに侵略されてきたにも関わらず、ウクライナ人はお互いに協力して、自分たちの言語や文化を守り抜いて来たからだという。
たとえ外国人であっても、困っている人がいれば快く手助けするというのである。

僕がこれまで接して来たウクライナ人の人々は、とても親切で、予想以上にフレンドリーだった。
偏見かもしれないが、人々の表情を見ても穏やかな顔をしている人が多いように思われる。

アルトゥールは風邪気味で、少し体調が良くないので、別の公園へ着くと、ベンチで休憩する。
公園の中
ポニーにも乗れるらしい
信号を待つ人々


紅のタラス・シェフチェンコ大学

アリーナと別れたあと、街中に探索に出かける。
今日はどこに連れて行ってくれるのだろう?

メトロに乗り、街を歩いて行くと、巨大な教会が建っていた。
ウクライナの主な宗教はウクライナ正教で、円形の屋根の上に十字架が飾られているのが特徴的である。
キエフ市内には多くこの種の教会を見かける。

建物の中に入ってみた。
とても静かで、薄暗く、厳かな雰囲気がした。
ろうそくの微かな光で、壁や天井にはキリストや、マリアの絵画が照らされていた。
アルトゥールは特別信心深い人間ではないが、教会を出るときには十字を切っていた。
日本人が仏の前で手を合わせるように、最低限の礼儀作法なのだろう。

次に歩いて向かったのは、タラス・シェフチェンコ大学。
ウクライナ最高峰の大学である。
ここを卒業した学生の多くは官僚となり、ウクライナの国政を担っていく。
ただ、現在ウクライナでは政治家の汚職が横行しており、アルトゥールは、将来の政治家を輩出していくこの大学にいい印象を持っていないようだ。

一時期、「美人すぎる首相」として日本でも話題になったユリア・ティモシェンコ前首相も、汚職の疑いで公判中である。

タラス・シェフチェンコ大学の向かいには、タラス・シェフチェンコ公園があり、シェフチェンコの像が建っている。
彼は有名な詩人だそうだが、詳しいことは知らない。
公園のベンチでひと休みする。
ウクライナの公園はとても広くて、至る所にベンチが置いてある。
他のベンチに座っている人たちの多くは学生だろうとアルトゥールは言ったが、僕にはやはりウクライナ人は大人びて見える。
アルトゥールは隣のおじいさんに話しかけられてから、ずっと話をしているので、周りの風景を眺めたり、写真を撮ったりした。

スーパーをハシゴする

一旦家に戻り、ルーダに買ってきた物を渡すと再び外出する。
今度は別のスーパーへ。
スィゥポとは違うところで、どうやら家の周囲にはいくつものスーパーがあるらしい。
ここも基本的なシステムはスィゥポと同じで、カバン、上着をロッカーへ、ATMもある。
ここではクワスを買ってもらった。



今回買ってもらったのは「クバス・タラス」という種類で、500ml,5フリブナくらいである。
彼はクバスを2本とポケットティッシュを買い、スーパーを出ると2人でクバスを飲んだ。
味は家で飲んだ白いボトルのものよりも、パンの風味が弱めで飲みやすかった。

未だにアルトゥールにおごってもらいっぱなしである。
僕は「PLUS」というキャッシュカードを持っていたのだが、このカードに対応するATMが見つからず、お金を引き落とすことができなかった。
後に「PLUS」対応というマークがなくても、「VISA」や「MASTER CARD」対応のどこにでもある普通ATMで引き落とせることが分かったのだが。

休憩しているとき、アルトゥールが友達を見つけてこちらに呼んで来た。
アリーナという子で、アルトゥールの同級生である。
アルトゥールの友達というのはほとんどが女友達のことを指している。
ウクライナでは文系学部は女子の割合が非常に高いということを考慮しても非常に多い。

アルトゥールの通う大学では、英語のカリキュラムが充実しているようで、誰でも英語を喋れる。
アリーナに今後のプランを聞かれたが、行きたい都市は決まっているものの、具体的なプランは決まっていなかった。
キエフだけでもアルトゥールが紹介してくれそうなところは多く残っている感じだった。
アリーナとも普通に会話はできたが、もっと英語が上手ければ、もっと喋れたと感じた。

スーパの雰囲気も違う

朝食がやや遅めだったので、昼食はとらずに出掛けることに。
家の近くのスーパーへ買い物に行った。
店の名前は「スィゥポ」。
ウクライナ語で"Сільпо"と書く。
店内に入ると、まず大きな荷物はロッカーの中に入れておく。
店内にATMが設置されていて便利だと感じた。
今回はルーダにお使いを頼まれ、レモンを買いに行った。
毎食後に出される紅茶に入れるためである。
ちなみにウクライナ語でお茶は「チャイ」と言う。

野菜売り場では箱に入った野菜が山積みになって置いてあるだけで、パック詰めされているものはない。
レモンは15フリブナ(150円)と書かれていて、「1個15フリブナか?」とアルトゥールに確認してみたら、「1キロ15フリブナだ」と言われた。
どうやら野菜は全てキロ当たりで売られているらしい。
ウクライナの野菜の値段はどれも格安である。
普段食べているトマトやパプリカは1キロ5フリブナくらいにしかならなかった。

アルトゥールはレモンの山から3,4個取り出して、野菜売り場にあるはかりの前に行く。
そこには従業員がいて、重さを量って値段のラベルを貼ってくれる。

次に向かったのは野菜売り場の隣の魚売り場。
ウクライナは内陸国なので、魚は売ってないだろうと思っていたが、サーモンと水槽の中に鯉がいた。

店の奥には肉類が並んでいて、どのような肉かは忘れたが40フリブナ位の値札が貼られていたと思う。

店の真ん中部分に位置しているのはドリンク、菓子、日用品などの売り場である。
ドリンク売り場には大量の酒類が置いてあった。
日本ではビール、カクテル、チューハイの缶が売り場の半分位を占めているが、ここにはカクテル、チューハイは全く見当たらない。
ほとんどがビンで、日本よりもはるかに豊富な種類のビールが並んでいる。
色も品種によって微妙に違う。
あとはワイン、ウイスキー、ウオッカなどの酒が多く並んでいた。これは日本よりもヘビードリンカーの多い証だと考えられる。

これ以上買うものはないのでレジの方へ。
レジを待っているとき、野菜売り場と真逆に位置する側にはパン売り場があり、既に袋に入っているものと、パンがむき出しになっていて、買うときにセルフサービスで紙袋に入れる種類のものがあった。

レジの前にはガム、チョコレートなどのスティック上のお菓子がカゴに並べられていた。
売り場の構造は日本のスーパーと似ているが、日本で売っているものはほとんど見かけなかった。
レジ前のカゴでキットカットを見つけたくらいだ。

レジのテーブルにはコンベアベルトが付いており。
買うものをその上に載せて順番を待つ。
他の人のものと商品が混ざらないように、自分の商品と他の人の商品との間に置いておくための四角柱の棒が1本ある。
従業員は座ってレジをしていて、日本のスーパーのと比べると愛想がないなと感じた。
レジは女性で、彼女たちの上にはタバコの入ったケースがつり下げられてあった。
タバコは高くても15フリブナくらいだった。
街中で男女関わらずタバコを吸っているのをよく見かける。

店を出たあとアルトゥールに店員に愛想がないということを話したが、ウクライナではみんなが対等な立場であるので、店員であっても客と対等であるという考えで接しているのだという。
日本では、お客様は神様のように扱う慣習があるので、ふてぶてしく座ってレジ打ちをしている店員にクレームが来ないのが不思議だった。