アルトゥールの友達とも一緒に

アルトゥールの待っていた友達というのはヴァレリアという大学の同級生だった。
ウクライナでは男女で食事に行ったり、遊びに行くことはごく普通のことなのである。
もし日本で同じように男の子が女の子を遊びに誘ったりしたら、彼は彼女に気があるのではないかと思われるのではないだろうか?
そのことをアルトゥールに話すと彼は"complicated(複雑だ)"と言った。
ヴァレリアとは前にアルトゥールと一緒に大学に行ったときに会っていたようなのだが、覚えていなかった。
一度に多くの友達を紹介してもらい、顔と名前が一致していなかった。
しばらくすると彼女がやって来た。顔を見ると確かに見覚えがあった。

メトロに乗って移動し、トローリーバスに乗る。
天井から長いアンテナのようなものが付いていて、道路の上にある電線の様なものを伝って走るバスである。
アルトゥールやヴァレリアは普段の生活ではあまり使わないらしい。
お年寄りは無料で乗れるので、よく利用するそうだ。
料金は1人1.5フリブナ(15円)。
買い方はアルトゥールに任せていて詳しくは分からなかったが、バスの真ん中に立っている、ふてくされた顔をしたおじさんに料金と引き換えにチケットをもらう。
おじさんは僕の目から見ると、他の乗客と大して変わらぬ身なりをしていた。
もし僕1人でトローリーバスに乗ったのなら、お金の払い方に困っただろう。
チケットを貰ったら、車内のポールに付けられた穴開けパンチでチケットに穴を開ける。
降りるときにそのチケットを提示する必要はないので、乗客がちゃんとお金を払っているかというチェックが甘いように思われた。
満員の車内でふてくされたおじさんのとこまで行くことができない、という人は隣の人にお金を回してもらってチケットを手に入れれる。

僕とアルトゥールとヴァレリアの3人で、教会に行った。

ウクライナではウクライナ正教が主流なため、屋根が丸くてその上に十字が立てられた建物がたくさんみられる。
カトリック、プロテスタントとは違った趣がある。

キリスト教が伝わる前はペガニズム(自然崇拝)が主流だった。キリスト教により駆逐されてしまったが、現在でも、その名残として、トーテムポールのようなものを市内で見かけた。

正教といえば「ギリシャ正教」が日本でも有名だが、ウクライナ正教とは別物らしい。
ギリシャ正教が正教のなかで大きな地位を占めているの確かだが、一部の正教教会ではウクライナ正教会のように自治を行ってきたものもあるようだ。

教会の入り口で、ヴァレリアは頭巾をかぶる。
建物の中の構造は前に見た教会とほぼ同じで、壁や天井にキリストやマリアにまつわる絵画が描かれていた。
外の世界とは隔離された静かな空間である。
絵画を眺めていたが、聖書の知識が全くない人間なため、描かれている人物が誰で何を表しているのか全く分からなかった。
それよりも、よくこのような派手な教会が街の至る所にあり、誰が維持費を負担しているのか気になった。
教会を出てから2人に聞くと、教会はいまでは一種のビジネスになっているらしい。

ここの教会の向かい側にも別の教会が建っていて、横断歩道を渡って歩けばすぐのところにある。
ここは入場料をとるらしいので中には入らなかったが、教会の前にある広場の真ん中に、馬に乗った男の像が建っていた。
ウクライナの部族の長らしい人で、彼は右手にコンボウのようなものを持っている(写真では隠れてしまっている)。
コンボウは指揮をするための軍配うちわみたいなものらしい。
コンボウの指し示す先にはモスクワがあり、ウクライナの学者はそれはロシア(旧ソ)からの独立の象徴であると解釈する一方で、ロシアの学者はモスクワを示すことはロシアとウクライナの協調の証であると解釈しているのだそうだ。

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