イルピンのヤポーニツ(日本人)

家を出て、僕とアルトゥール、ダニエルの3人で街を歩く。
ダニエルはアルトゥールの幼なじみで、金髪を短く切った髪型で、ほおはふっくらとし、少し赤みがかっている。
ダニエルは英語を喋られないし、彼は少しシャイな感じだったので彼とはほとんど会話ができなかった。
アルトゥールはダニエルとウクライナ語で会話をしているので僕は周囲の風景を眺めていた。
新しい町の風景を観察するのは面白かった。

アルトゥールが僕が全く話に入れないので気を遣った。
僕は大丈夫だったので、写真を撮って時間を潰した。
ウクライナに来てからこの時点までで、僕は少なくとも500枚以上の写真を撮っていたと思う。
どれもが僕にとっては新鮮に見えたからだ。
しかしアルトゥールの両親宅で先ほど食事をしていたときの話なのだが、僕の撮ったルーダの家の写真を部屋のみんなに見せてみたら、大爆笑された。
「なんて当たり前過ぎるものをとっているのだ」という感じなのだと思った。
裏を返せば、現地の人間にとっては当たり前過ぎて気付かないことがあるのだ。
僕はウクライナ人よりもウクライナのごく日常の風景がいかに素晴らしいのかを理解できると思った。

街を歩いているときアルトゥールに何度か「すれ違う人が君を見ている」と言われた。
キエフあっても日本人はごくまれな存在であるが、田舎の人にとっては更にレアな人間となってしまう。
このとき、僕はイゥピンで唯一のアジア人だったかもしれない。