気まぐれドライブ

今日もアルトゥールの家族とドライブに行くことになった。
キィーヴから車を南方に走らせる。
当初はウクライナの伝統的な農村風景が復元された場所に行く予定だったが、時間制限のために入れなかった。
とはいえ閉まる時間は午後6時で、もし夕方ごろにルーダの家に来て、ゆっくり軽食や雑談をしていなければ、十分に間に合っていただろう。
ウクライナ人は適当なんだと思った。

予定を変更し、National Exhibitionという場所に来た。
ここは旧ソ連時代に社会主義の成功を外部にアピールする場だった。
もちろん権力のもと、都合の悪い部分を全て隠していたのだが。
ヴィクトアは子供のころに、彼の母親とここに来たようだ。
当時はおいしそうなパン、ソーセージ、バターなどがもらえたそうだ。

現在は一般開放されており、周囲に立派な建物が無数にある、公園になっていた。

敷地内を散歩していると、リスを見つけた。
日本では見慣れないが、ここでは自然の多い公園では普通に見つかる。
壁の側面に家畜が描かれた建物があった。
ソ連時代には、国の豊かさを誇示するために家畜が入れられていたらしい。
当時子供だったヴィクトアは、建物の中に入ると、酷い悪臭がして、二度と行きたくないと思ったそうだ。

子供って疲れ知らずだと感じた瞬間

2011/9/18(日)

アルトゥールは明日の授業の予習をする必要があるので、僕はそのあいだソファーに座ってメトロの駅名でも覚えることにした。
日曜日だし、このまま家でのんびりするものと思っていた。

玄関の方で物音がしたと思ったら、ジョージが部屋の扉からひょっこり顔を出した。
今日もヴィクトア、オリャ、ジョージがやって来たのだった。
ジョージは僕と遊ぶ気満々だった。

アルトゥールは前にジョージがやってくると、さっぱり勉強できないと言っていたが理由がよくわかった。
昨日散々遊んであげたにもかかわらず、元気いっぱいだった。
僕は体力には自信がある方だが、さすがに2日連続でジョージの相手はちょっと疲れた。

ジョージは昨日と同様にオモチャの車を使って遊ぶ。
タイヤにゼンマイが付いていて、何度か車を後ろに引っ張って手を放すと前に進む。
ジョージはいくつもの車を僕に向けて発車させ、僕も車を手にとっては向こうへ応車した。
僕が手際よく次々と車を向こうにやると、ジョージは興奮しだし、手に負えなくなると、素手で車を全部吹き飛ばしてしまうのだった。
加減を知らないので、車が色んな方向に飛んでいくし、それがアルトゥールの勉強している机にぶつかり、騒がしくなった。
余りにも騒ぐので、ジョージは両親に叱られ、キッチンへ連れて行かれた。

ヴィクトアは、僕を気遣ってか、アルバムを開いて見せてくれた。
彼は仕事で非常に多くの国に行っていた。
ブダペスト、ボストン、スウェーデンなど20~30か国に行ったことがあるらしい。
アルトゥールの子供のころの写真もあった。
アルトゥール一家はアルトゥールがミドルスクールにいたころ、アメリカに住んでいた。
アルトゥールはそのころから写真でも目立つほどの巻き毛だった。

しばらくしてジョージが戻ってきた。
ジョージは僕の手を引っ張り、トイレに連れて行った。
連れションしに行くほど僕のことを気に入ってくれていたらしい。

今夜のディナーは

ドライブをしていると、これまで見たことのある風景がたくさんあって面白かった。
キエフ・シーからの帰りに少し寄り道した。
着いた先はドニプロ川の側で、ライトアップされたキエフの街と高速道路が見渡される。
下の写真の石像は、ウクライナを建国したとされる伝説上の人物たちである。
車外は10度を切っていて、日本から持ってきた秋物のパーカーだと、少し肌寒く感じた。

そのことをヴィクトアに話すと、全然寒くないと笑われた。
僕以外は半そででも余裕のようだった。
日本はまだまだ残暑が厳しいときだった。
側には大量の空き瓶が置いてあった。
どうやら結婚の祝賀パーティが行われていたらしい。
遠くで若者の集団が見えた。
帰りにスーパーに寄り、ルーダのアパートの駐車場で僕とアルトゥールは車を降りた。
ヴィクトアと握手をし、彼らの実家へ去って行った。

晩御飯のとき、アルトゥールはヴォトカを用意してくれた。
僕が帰りの車で飲んでみたいと言っていたからだ。
おちょこ位の大きさのグラスに軽く注ぎ、2人で飲んだ。
喉が焼けるような感じがした。

食事はさっきスーパーで買ってきた惣菜が並べれていた。
今日はウクライナ・スタイルでなく、フレンチ・スタイルだとアルトゥールは言った。
僕は美味しければ何でも構わないと答えた。

特集:ウクライナ人はロマンチスト?

僕がウクライナ人に好感を持ったことは、デートをするときは異性に花を贈ることである。
街を歩いているといたるところに花屋(квіти)を見かける。
メトロの地下街にあったり、道端でおばちゃんが売ってたりといろいろある。
花を持っている男性を見かけると、今から女性を待っているのだということを、アルトゥールが教えてくれた。
たまに女性が花を持っていることがあり、その場合はアルトゥールであっても理解に苦しむ。

さり気にロマンチックなプレゼントを贈れるウクライナ人に憧れる。
僕はまず、相手を見つけることから始めるとしよう。
メトロの地下道にて

24時間営業の花屋