番外編:キエフの空港で

ここからは、アルトゥールたちと別れてから、日本に帰ってくるまでにあった出来事を書いていく。
ウクライナでの滞在と同様、最後まで僕を楽しませてくれた。

飛行機が30分遅延しただけでなく、さらに搭乗時間も遅くにずれ込んだ。
行きのモスクワーキィーヴ間の便も遅延していたが、航空会社はいずれもロシアのエアロフロートである。

搭乗口にはすでに行列ができていた。
ただ、搭乗時間を過ぎてもゲートが開かないのである。
僕は他の人たち同様、チケットを手に持ち、意味も分からず立ち尽くしていた。
僕から2,3人前のところに、鼻が高く、彫りの深い初老のおじさんがいた。
彼は自分前後を行ったり来たりして、他の人の持っているチケットをこっそり見ようとしていた。
傍から見ると不審者にしか見えなかったが、僕のほうにもやって来たので、チケットを見せてあげた。
おじさんは辺りを少し回ったあと、再び僕の隣にやって来た。
話しかけられ、挨拶らしきものをいわれたが、僕は全く理解ができず、そのことを英語で伝えた。
おじさんの英語はカタコトであったが、なんとか会話ができた。
彼はイラン人で、さっき話しかけてきたのはペルシャ語だった。
息子がウクライナで勉強していて、彼に会いに11日間滞在していたという。
おじさんはタイにも行ったことがあるらしく、どうだったか聞いてみると、ウクライナよりも良かったと答えた。
タイではみんな自分に対してフレンドリーに話しかけてくれたのに、ウクライナではそうでなかったからだ。
現地の人と一緒に行動するのと、外国人として旅行をするのでは、見える世界が大きく変わるのだろう。
僕の場合、人に恵まれたと思う。

彼との会話が盛り上がったので、気付いたら搭乗ゲートが開いていた。
おじさんがあまりにもフレンドリーだったので、リュックのファスナーを確認し、無くなったものはないか一応確認した。
問題なかったので、彼は根っからいい人なのだと思った。

彼は席の前の方に、僕は後ろの方だったので、飛行機に乗っているときに彼と話す機会はなかった。

モスクワに到着し、飛行機から降りるのを待っているときにも、たまたまイラン人のおじさんと出くわし、少し話をした。
手荷物検査ときに別々になり、トランジットのために空港内を移動しているときに再び遭遇した。
搭乗ターミナルが違うので、その場で握手をして別れた。

「君は自信に満ち溢れている」
彼は僕にそう言った。

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